症状ごとの治療法・治療例
野球肘って何? -予防と早めの対応が重要ですー
10歳から16歳の野球少年の実に40%以上が肘の痛みを経験したことがあるといわれています。野球肘はなぜ起きるのでしょうか?成長期の肘関節周辺には成長の元となる軟骨成分が多く、大人の肘とは違った弱い構造をしています。ボールを投げる瞬間(投球動作でこれを加速期といいます)肘関節には、外側にくの字にしなる外反という強いストレスがかかります。この動作が繰り返し行われることで、肘の内側には上腕の骨と前腕の骨との間で引っ張り合うカによる関節靭帯付着部の骨のはがれる障害が、外側には逆に骨と骨とが衝突し合うことによる関節軟骨が壊れていく障害が生じてくるのです。小学生から中学低学年には肘の内側障害が、中学生から高校生にかけては肘の外側障害が一般に多く見られます。この障害は、野球に代表される物を投げるスポーツだけでなく、 柔道や剣道などほかのスポーツでも同じストレスが線り返し肘関節に加わると発症する場合があります。つまり、 “野球肘”は、成長期の構造上弱い肘関節に、過度のストレスが加わることによって生じる“使いすぎ症候群”と言えるのです。ということは“使い過ぎ”だから適度に休みを取るのがいいわけですよね。しかし、レギュラーが間近に見えてきたり、チームの中心選手だったりすると、我慢して、なかなか休まなかったりします。ですから子供さんが痛みを訴えて病院に来られるときは、かなり進行していて、レントゲン画像などではっきり異常が見える場合が多いと思ってください。当院では特殊な画像診断や単なる安静指導だけでなく、その発症原因が、肩や腰痛、下肢の障害によるフォームの崩れではないかもチェックし、リハビリスタッフによる肩関節周辺のストレッチや投球フォームのチェックもあわせて行うことで復帰時期の決定、再発予防指導を行っています。残念ながら症状が進行してしまった患者さんには手術治療も行っています。しかし成長期の関節を手術するということは私たちにとっ ては最終手段ですし、復帰には1年はかかってしまいます。最善の方法は、何と言っても“野球肘”を生じさせないことです。子供たちにはこんな障害があるということをご家族の方もぜひ知っておいていただいて、早めに受診していただけるとうれしいです。