症状ごとの治療法・治療例
「本当は怖い手首の捻挫」 ~恐ろしい舟状骨骨折が隠れている~
「○○太郎君はバスケット中に転倒し手を強くついた際、手首の親指側に痛みを覚えましたが、別に変形もないので、数日様子を見ていました。しかし痛みがとれないので、念のために○野クリニックを受診しました。そこで手首のX線写真を2枚撮りましたが異常がなく、手首の捻挫と言われました。それから2ヶ月しても痛みが引かないので、 もう一度受診したところ、舟状骨という手首の小さな骨に骨折があると言われ、更にこのままにしておくと、痛みが増し、力が落ち、手首の動きも悪くなる後遺症となるので、骨盤から骨を採って骨折部に移植し、骨をつける 手術が必要と言われました。」骨折の診断に欠かせないX線が発見され100年以上たちましたが、これは未だに外来でよく見られる風景です。 舟状骨が骨折した場合、早い時期に診断することが非常に難しく、骨折が重症化し骨が吸収されてから発見されることが多いのです。
この舟状骨骨折を早期に発見するには、まずこの骨を圧迫します。(図の矢印箇所)痛みがあれば、
骨折が疑わしいので、この骨に対する特殊なX線撮影を行います。この特殊撮影で骨折が見えなくとも、
骨折は否定できません。この時点で3人のうち、1人が骨折しています。治療は、骨折がある場合を想定
して3週間から6週間のギプスをしなければなりません。
骨折が疑われるだけで長期間ギプス固定をするのは患者さんにとっては納得できません。そこで当院
ではMRIで早期に診断しています。そして骨折が無ければギプスはしません。しかし骨折があればギプ
ス固定をするか、1cmの小さな切開で、骨折をネジで固定する手術を行います。術後はギプスはしません。
このように、発見が遅れ、治療に難渋し、後遺症が残り易い舟状骨骨折ですが、早期に発見できれれば、治療は極めて容易となります。手首の捻挫と云えども決して軽視はできません。早めに御相談頂ければと思います。